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令和6年版・厚生労働白書を読み解く~「失われた30年」で失われた日本人のこころの健康について~

■はじめに

自然、農の力でメンタルヘルス(心の健康)を取り戻す・Regain(リゲイン)の萩原です。

2024年8月27日に、厚生労働白書が公表されました。

https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/23/index.html

白書の参考資料「こころの健康を取り巻く環境とその現状」では、2000年代に入ってから増加傾向となっている「精神疾患を有する外来患者数」(以下、患者数)について、直近の調査(令和2年)で約586万人と、急激に増加したことが示されています。

今回はこのデータについて、患者の年齢に対応する世代の人口と、各世代の人口に対する患者数の割合(以下、患者割合)を計算し、約20年間の推移をまとめました(表1)。

(表1)世代別にみた、精神疾患を有する「外来患者数」と「人口対比の割合」の推移
①2002年(平成14年)②2011年(平成23年)③2020年(令和2年)
年齢患者数人口割合年齢患者数人口割合年齢患者数人口割合
75〜28910,0432.9
65~7432013,5862.475〜64214,7074.4
55~6433816,7592.065~7433315,0432.275〜1,36218,6027.3
45~5436818,7572.055~6437818,9532.065~7469417,4254.0
35~4434216,0582.145~5440215,6062.655~6471415,3814.6
25~3434918,9231.835~4450419,0272.645~5498018,6065.3
~2422833,3080.725~3433715,3132.235~4478315,9764.9
総数2,234127,4341.8~2427929,1491.025~3454213,0974.1
総数2,875127,7982.2~2479027,0592.9
総数5,865126,1464.6
※患者数・人口は千人。割合は%。

 

21世紀になってからの20年間余、世代別にみた日本人のメンタルヘルスは10年ごとにどう変化したのか?今後どうなりそうなのか?見えてきたものをお届けしたいと思います。

 

■前提

上記の表において、①2002年のデータは2000年、②2011年のデータは2010年と読み替えても、分析結果の概要は変わらないと考えます。

 

まず、働く人の世代を次の6つに分類します(前後5年を含む)。

<引退世代>1950年生まれ(現在70代):①2000年で50歳、②2010年で60歳、③2020年で70歳。

<第一世代>1960年生まれ(現在60代):①2000年で40歳、②2010年で50歳、③2020年で60歳。

<第二世代>1970年生まれ(現在50代):①2000年で30歳、②2010年で40歳、③2020年で50歳。

<第三世代>1980年生まれ(現在40代):①2000年で20歳、②2010年で30歳、③2020年で40歳。

<第四世代>1990年生まれ(現在30代):①2000年で10歳、②2010年で20歳、③2020年で30歳。

<第五世代>2000年生まれ(現在20代):①2000年で0歳、②2010年で10歳、③2020年で20歳。

 

次に各世代ごとに、患者割合の実績と予測値を試算しました(表2)。

(表2)世代ごとの患者割合の推移(実績と予想)
20歳時点30歳時点40歳時点50歳時点60歳時点70歳時点
引退世代2.02.04.0
第一世代2.12.64.66.7
第二世代1.82.65.37.910.5
第三世代0.72.24.97.610.313.0
第四世代1.04.17.310.513.716.9
第五世代2.96.19.312.515.618.8
※黒太字は、直近(令和2年)調査の実績値。

※赤字は、直近10年と同じ幅で患者割合が推移すると仮定した予測値。

 

■結論

・日本ではメンタルヘルスが悪化し、若年化が進んでいます。職業人生の各ステージで直面するストレスについて、個人・社会それぞれの対策が求められます。

・現在、特に苦境を迎えているのは、40代50代です。

・20代30代は先輩世代の同時期に比べて、患者割合が2~3倍になっており、今後の推移が懸念されます。

 

■詳細

景気のアップダウンを人生のどの局面で迎えるかが、キャリアや経済的な余裕、さらにはメンタルヘルスに大きく影響を与えるのではないでしょうか?

バブル崩壊後の日本において、世代別の患者数と患者割合の推移を、それぞれが直面した環境を踏まえて、考察します。

 

引退世代(70代)

70代後半となった団塊を含むこの世代は、高度成長期に、幼少期を過ごし就職した。就職後は働き盛り(30〜40代)にバブル景気を謳歌。但し、50から60にかけて変わらなかった患者割合が、引退後の70で倍増していることに注意。

 

第一世代(60代)

2つのベビーブームの間に挟まれ、前後よりも人口が少ないこの世代は、管理職となった40代以降に逆風が吹いた。定年延長など制度変更の影響も受けたがようやく、老後のメドがついたところか。この10年、患者割合の増加は世代間でもっとも軽微。

 

第二世代(50代)

バブル世代から就職氷河期世代前期のこの世代は、第2次ベビーブーマーも含む。同世代との過酷な競争にさらされて社会人生活を過ごす中、第一世代のような「逃げ切り」は難しいことが明白になりつつある。患者数、患者割合ともに世代間で最悪。

 

第三世代(40代)

就職氷河期世代後期。厳しい就職環境の中、40代を迎え、転職などのキャリアチェンジも難しくなっているか。患者割合は上の世代と比較して大きく増加した。また、令和5年調査「現在のこころの健康状態に対する回答別割合(年代別)」で「(あまり)よくない」と答えた人の割合は、40代がもっとも高く深刻。

 

第四世代(30代)・第五世代(20代)

ゆとり世代、Z世代と言われる若年層。この20年間の推移について、上の世代と同じ基準で比較できないが、上の世代と比べ、若いころから患者割合が高くなっている。白書にあるように「若い世代には、こころの不調に対する理解や共感が、他の世代よりも広まっている」ことが理由のひとつと考えられるが、今後、加齢とともに患者割合が上昇する場合、大きな社会問題に発展するかもしれない。

以上、各世代ごとの特長でした。

 

わたしたちRegainについて

Regainは、主に就労中のストレスにより心の健康を失った人が、野菜作りを通じて傷ついた心をいやし、本来の自分らしさを取り戻すサポートを行う団体です。

自然に触れて野菜を育てることで、傷ついた心をいやしていきながら、本当に自分がやりたいことや、働き方・生き方を見つめ直すきっかけになるような場所を作っていきます。

毎週、藤沢市葛原の畑で活動しています。お気軽に見学・体験(いずれも無料)にお越し下さい。申し込みは下記のWebサイトから。どうぞ、よろしくお願いします。

https://regain-farm.com/