一度うつになったら完治しないのか?鬱(うつ)・躁鬱(そううつ)=双極性障害・適応障害・統合失調症など精神疾患による休職・退職や、引きこもりから復活した人の経験をお伝えするコラム「当事者目線」 ケースNo.1・第8回 再発予防期の注意点(前編)
第1回 経歴と先天的な性格(前編)はこちら
第2回 経歴と先天的な性格(後編)はこちら
第3回 発症直前の様子 はこちら
第4回 急性期の実情(前編)はこちら
第5回 急性期の実情(後編)はこちら
第6回 回復期の取組(前編)はこちら
第7回 回復期の取組(後編)はこちら
はじめに
自然、農の力でメンタルヘルス(心の健康)を取り戻す・Regain(リゲイン)の萩原です。
メンタルヘルス不調は、誰にでも起こり得る問題です。
しかしメンタルヘルス不調を原因として引き起こされる精神障害や精神疾患は、多くの人にとってネガティブなイメージがあり、直面した当事者が自分の障害を受け入れることは困難です。
その結果、精神的につらい状況を抱え込み、誰にも相談できずに苦しむことになります。
このコラムでは、就労中に鬱(うつ)病や双極性障害、適応障害、統合失調症などの病気を発症し、そこから回復を果たした当事者の声をお届けします。
彼らの経験談が、同じような状況に陥って悩んでいる方々の参考となり、助け合いの輪が広がることを願っています。
ケースNo1.Yさん:50歳男性。就業中に鬱(うつ)、躁鬱(そううつ)を経験。休職からの復職経験あり。
萩原:第8回、第9回では、「再発予防期の注意点」として、再発のリスクや、再発を防止するための対処方法(セルフケア、服薬等)について伺っていきます。
再発のリスク
Yさん:「今ではすっかり元気になってもう10年以上が経ちます」といった読者を勇気づける話をしたいところですが、私はこれまで二度、鬱(うつ)を再発しています。どんなに気をつけていても再発する可能性があることを身をもって経験しています。
萩原:精神疾患が治っても通常、「完治」とは言わず「寛解」(かんかい=症状が落ち着いて安定した状態)という言葉を使うことからも、再発の問題を考えるにあたって最初に押さえておきたいポイントですね。
Yさん:はい。職場復帰後は時短勤務や、オフィス外で仕事をするなど自由な働き方でメンタルヘルスを保っていました。社長という融通のきく立場だったからこそできたことです。また、鬱(うつ)から双極性障害に診断が変わったのは、SNSの投稿を見た知り合いの医者が「鬱(うつ)じゃなくて双極性障害だと思う」と別の医者にかかるよう勧めたのがきっかけでした。日常の様子をこまめに医者と共有することが大事かもしれません。
診断と治療の変化
萩原:診断名が変わると、処方される薬も含めた治療法も大きく変わりそうですね。
Yさん:薬も変わりましたが、医師との関わりやセルフケアの考え方も変わりました。薬は、睡眠導入剤に加え、双極性障害における感情の高まりや行動を抑える気分安定薬を服用するようになりました。私の職業人生では起業家としてバリバリ仕事をする躁状態と、気持ちが落ち込むうつ状態が波のように交互にやってくるのだと理解しました。
セルフケアの重要性
Yさん:躁(そう)状態にあるときは医師から、「今は会社などで意見を求められても、言わないように」と指示されました。当時は反発していましたが、躁(そう)状態のときに発言してもいいことはない、ということだったのでしょう。何度も躁鬱(そううつ)の波を繰り返す経験をしてようやく、後から振り返って「あのときのあれは躁(そう)だったのかも?じゃあ今も?」みたいに、自分の言動をセーブできるようになりました。
萩原:再発予防についての貴重なお話をありがとうございました。次回は、再発予防期のさらなる注意点についてお伺いします(後編に続く)。
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- 執筆者は医師ではなく、医療行為や医療行為に関するアドバイスを提供するものではありません。
- 症状に対する対処法は当事者の選択であり、他のケースに当てはまるとは限りません。
わたしたちRegainについて
Regainは、主に就労中のストレスにより心の健康を失った人が、野菜作りを通じて傷ついた心をいやし、本来の自分らしさを取り戻すサポートを行う団体です。
自然に触れて野菜を育てることで、傷ついた心をいやしていきながら、本当に自分がやりたいことや、働き方・生き方を見つめ直すきっかけになるような場所を作っていきます。
毎週、藤沢市葛原の畑で活動しています。お気軽に見学・体験(いずれも無料)にお越し下さい。申し込みは下記のWebサイトから。どうぞ、よろしくお願いします。